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いつか、またどこかで会おうよ

こんにちは、金益見(きむいっきょん)です。

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

昨日書いた美大あるあるから、昔読んだリリー・フランキーさんとナンシー関さんの対談を思い出した。

私の記憶が正しければ、リリーさん曰く、美大に行ってた頃は国分寺あたりに椎名林檎さんのような女の子がゴロゴロいたという。

 

正確に思い出したくなったので、当時読んだ本を引っぱり出してきたら、その対談は、「カッコイイと思うもの」の受け取られ方にまで話が及んでて、とても面白かった。

 

リリー 俺ら10代の頃はそもそもカッコイイものの大前提が、確実に後ろ向きなものだったから。そういう意味では俺らのほうが病んでるんだけどね。世代として。

ナンシー アンチが正義だもんね。でも話ややこしくなるかもしんないけど、椎名林檎が200万枚売れてるのはどういうことかと思う。だってあれは最もわかりやすいアンチのスタイルでしょう。

リリー レコ評書くたび思うんだけど、売れて一番不幸なのは椎名林檎だと思うよ。だって自分の意識としては、昔俺が美大行ってた頃、国分寺にゴロゴロいた女のタイプだろうし。モヒカン頭にブラジャー一枚で、バイブとマネキン持ってライブ会場に来る(笑)。その時代の中でアンチを自任するには、そこまで振り幅を拡げないと駄目だった。歯を抜いたり、看護婦の格好している女友だちとか本当にいたもん。でもそれを今やったらこんなにポピュラーだったってことで、椎名林檎は不幸。

ナンシー でも私、椎名林檎見てて思うのは、この人は自分が看護婦の衣装を着てガラスを割ることで200万枚売れてること、わかってんじゃないかってことだな。看護婦の格好してても、顔はすごく美人に化粧してあるでしょ。前歯まで抜く気はないんだって言う「そこそこでやめる気だな」というのが感じられちゃうんですよ。別にそれがいけないってことじゃないんだけど、アンチがすでにアンチじゃないという大前提をきちっとふまえて、記号的なアンチを表現してるだけなんじゃないかと思っちゃう。

リリー でも俺とナンシーさん、もしかして一番勘違いしているところはライフスタイルと音楽が直結していることが当たり前と思ってることかも。

ナンシー あ、言えてる(笑)。戸川純幻想か(笑)。祐也幻想とも言えるけど。

リリー 今はラッパーにしても椎名林檎にしても違うんだって言われれば、「あ、ごめんごめん」ってあやまるしかないね(笑)。

ナンシー そうだね。まあでも商売でやってるんだったら、私ぐらいは騙せるくらいに戦略たててくれよとも思うけどね。だからそうすると逆に、椎名林檎のアルバムを買うOLはどういうつもりで買ってるんだっていうのが、本当の闇の中になっちゃうんだけど。

リリー そう。なんでも、やってる本人よりそのまま受け取る側のほうが怖い存在なんですよ。そして、それがマスになっていくってことが。

ナンシー関リリーフランキー『小さなスナック』文藝春秋(2005)103~105頁

 

この時、噂されてる椎名林檎さんの楽曲は「本能」という曲で、当時は衝撃的なMVだったのです。

m.youtube.com

 

改めて読み返して、(当時の)椎名林檎さんのアルバムを買うOLへの疑問とか、そのまま受け取る大衆の怖さとか、これはちょっと立ち止まって考えたいトピックだなあと思った。

 

読んで思い出したのは、去年の夏に観た「帰ってきたヒトラー」というドイツ映画。

映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト

 

ヒトラーが現代によみがえり、モノマネ芸人として大スターになるというドイツのベストセラー小説を映画化したものなのだけど、去年観た映画のなかで一番怖い内容だった。

大衆がもつ性質のようなものって、国や時代が変わっても変わらないんだと。

 

12月にDVDが出たので、「ジャーナリズム論」を受講してくれている学生にも観てもらおうと思っている。

その時に、ナンシー関さんとリリーさんの話もしてみようかしら。